中国跨境B2Cの状況(その2:跨境贸易电子商务服务试点)

(承前)

さて、「跨境贸易电子商务服务试点」ですが、これは、実質、「越境ECにおける通関業務の試験区」のようなものです。2012年、ちょうど尖閣問題で日中間の関係がギクシャクする中、欧米との間では、すでに準備が進められていたようですが、実際に、表に出てくるのは、2013年の「署科函[2013]59号」です。

これまでは、基本的にはEMSで輸入されていたため、

  • 通関は郵政で行う。
  • その結果、全品検査は実質不可能なので、ランダムチェックで、みつかったものだけ課税する
  • 納税は受取人
  • 一応、「海关总署公告2010年第43号」でルールは定められているが、実際には商品の評価金額などの基準が不透明で運用も不透明

というものでした。

この「海关总署公告2010年第43号」のルール自体は変更しないが、

  • 郵便ではなく、一般の商業貿易の保税拠点を使う
  • 販売者と保税拠点でデータを連携し、販売者のほうが納税する
  • 課税基準となる商品の評価金額は、商品代金・物流費を含め、消費者が販売者に支払った金額とする

というのが、この制度の要諦となり、「海关总署公告2010年第43号」によって、まずは上海、杭州、宁波、郑州、广州、重庆の6都市で試験が行われることになりました。(2014年には深圳、苏州、青岛、长沙、平潭、银川、牡丹江、哈尔滨、西安の9都市にも拡大されています。)

 

さて、中国は、昔の共産主義の思想はどこえやら、すべて競争で成り立ち、競争によって成長している過酷な国です。

今回のこの試験区についても、各都市の保税区が、いかに有望な企業を誘致し、取扱高を増やすか競う状況なっています。(もちろん、徴税額も競っているのでしょう。販売者側は、いかに課税されないようにするかに知恵を絞るのですが、これについてはまた後ほど。)

そして、各都市が競った結果、各都市が同じようなサイトを立ち上げて、起業や商品の紹介・宣伝、そして都市によってはモールを作って販売までしています。(どいつもこいつもメリーズだらけで眩暈がしそうですが。。。)

重慶については、あまりよろしくない噂を小耳に挟んだりしますが、広州については、「とりあえず流通総額3億元で、6都市のうちではトップだ」などど言っています。

http://guangzhou.customs.gov.cn/publish/portal31/tab60991/info717760.htm

そして、後発組の深圳も、着々と準備を進めている様子が窺えます。

http://www.szqh.gov.cn/ljqh/qhwbsgq/cxfz/kjdzsw/

 

上記の中で、販売者のサイトを紹介している寧波、杭州、鄭州については、紹介されているショップのうちのいくつかは、天猫国際(tmall.hk)の中の店舗サイトにリンクされています。実際、この3都市は天猫国際公認という説もあります。(http://tech.163.com/14/0403/16/9OU0U5RV000915BF.html

天猫国際については後日、また触れようとか思いますが、「跨境贸易电子商务服务试点」はこれから天猫国際・支付宝(アリペイ)国際とあわせてさまざまな試行を行い、物流データと決済データの連携、為替管理の仕組みなどを整えながら、中国全土に開放されていくというのが今後の流れの本命でしょう。

 

ところで、上記のうち、上海については、8月下旬に、米アマゾンとの提携が発表され、日本でもニュースになりました。

また、ヤマト運輸の「チャイナダイレクト」も上海の試験区を用いているため、日本で情報を集めていると、どうしても上海だけが目立ってしまいます。(特に「上海自由貿易試験区」と混同されたりもします。)

「跨境贸易电子商务服务试点」を用いた貿易に関係している人々の間では、上海はどちらかというと「保守的」で、「あまり積極的ではない」と囁かれています。実際、アマゾンとの提携までは、他の都市と比べて、あまり外部に積極的に営業している雰囲気はありませんでした。(洋码头天猫国際のお店のように、店舗側が独自に上海を利用するケースはあったようですが。)

 

さて、この「跨境贸易电子商务服务试点」ですが、実は、この試験区の保税倉庫に商品を在庫し、お客様から注文が入ったら、個別に通関して出荷、などということも、各地で行われています。(まあ、これも試験ですね)

中国の場合、商検局の承認がなければ本来、販売できない商品が数多く存在します。健康食品やシャンプー・せっけん類を含む化粧品類のSFDA/CFDAや、電化製品・玩具類のCCCなどが有名なところです。

特に健康商品・化粧品については、CFDAの許可を得るのに多額の費用と時間がかかることから、まずは海外からの通販と、特定の許可された展示会場での展示即売会などがよく行われます。

上海自由貿易試験区では、保税倉庫での消費者への直売などというのも始まっていますし、「跨境贸易电子商务服务试点」の保税倉庫に商品を在庫して販売するのも、実は、海关(税関)にとっては関税の徴税率の向上になるのですが、商検局から見ると、CFDA/CCC逃れになるという側面があります。

 

「跨境贸易电子商务服务试点」の今後の展開は、商検局との関係が重要になってくると思われますが、こちらについても、また後日、触れようと思います。

 

(つづく)

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